
介護施設の面接ドタキャン — 施設長と本部で分担する5つの段取り
介護の採用で面接ドタキャンや面接に来ない応募者が出たとき、施設長が面接官を務める法人では誰が何を決めるか。5つの段取りを本部が決める3つと施設が決める2つに分け、分担表と点検表、公開調査の見方を示します。分け方は編集部の整理です。
施設長が面接官を兼ねる法人では、面接のドタキャン対策を現場任せにすると、施設ごとに文面も記録もばらつきやすくなります。かといって全部を本部で決めると、施設ごとの勤務表や人手の事情に合いません。面接のドタキャンを減らす!応募直後から始める企業側の12の打ち手(以下「十二の打ち手記事」)が示した「本部と施設で分ける」考え方を、この記事では5つの段取りに具体化し、どれを本部が決め、どれを施設が決めるかを1枚の表にします。12の打ち手そのものの中身は、十二の打ち手記事を参照してください。
1. この記事の位置づけ — 本部と施設の分担だけを扱う
十二の打ち手記事は、業種ごとの優先順位を扱う節で、施設長が面接官を務める介護施設について、面接枠(打ち手3)と待ち時間の上限(打ち手10)は施設ごとに決め、確定通知からリマインドまでの文面(打ち手4〜8)は法人本部で1つ作って配る方が、施設長の負担が増えないと示しています。ただし、この分け方は数行の方針にとどまり、なぜそう分けるのか、記録(打ち手12)は誰が持つのかまでは書いていません。
この記事は、その分け方を5つの段取りに広げ、決める理由とあわせて示します。5つに絞るのは、本部と施設のどちらが決めるかで運用が分かれやすい項目に限るためです(編集部の整理)。
2. 分担の考え方 — 施設長の時間を増やさない
施設長は採用以外の業務と兼任で面接に出る前提です(編集部の整理)。採用が主務でない立場の負担を示す一例として、小売業・飲食店の店舗責任者・エリアマネージャー・本部採用担当者への調査(ノーザンライツ2023年、n=106)では、採用プロセスの改善が必要な理由の最多が「採用業務が主務ではなく十分な時間を確保できないため」の44.2%でした(小売・飲食の調査で、介護ではありません)。
では、施設長の採用業務の時間や、本部と施設の採用の分担を示すデータはあるのでしょうか。介護労働安定センターの「介護労働実態調査」令和7年度の概要などを調べましたが、施設長の採用業務時間や、法人本部と施設の分担を示す調査・業界団体資料は確認できていません。このため、以下の分け方は公的調査で裏づけたものではなく、編集部の整理として示します。
分け方の軸は2つです。
- 施設ごとに違う情報がないと決められないもの(勤務表、人手、面接官の人数)は、施設が決める
- 1つあれば足りるもの、施設ごとにばらつくと困るもの(文面、記録の様式)は、本部が決める
本部は「型」を決め、施設は「施設ごとに違う情報」を決めます。 こう分けると、施設長の作業は、施設ごとの事情を伝えることと、差し込み欄を埋めることに絞れます。
3. 5つの段取りと本部・施設の分担表
5つの段取りを、面接までの時間順に並べました。対応する打ち手の番号は十二の打ち手記事のもので、中身はここでは再掲しません。
| 段取り | 対応する打ち手 | 決めるのは | 決めること | 分担の理由(編集部の整理) |
|---|---|---|---|---|
| ① 面接枠の出し方 | 3 | 施設 | 面接枠をどの型で、どの曜日・時間帯に出すか | 施設長の勤務表・人手・面接官の人数は施設ごとに違い、本部では枠を決められないため |
| ② 確定通知の文面と送り方 | 4〜6 | 本部 | 文面の型、送る手段、行けなくなったときの連絡先を誰が受けるか | 文面を1つにして配れば、施設長が作らずに済み、記載漏れも出にくいと考えられるため |
| ③ 前日リマインドの文面と送り方 | 7・8 | 本部 | 文面、送る時刻と手段、送った記録の残し方 | 前日の送信を本部が担えば、現場が忙しい日でも抜けにくいと考えられるため |
| ④ 当日の連絡担当と待ち時間の上限 | 10 | 施設 | 誰が連絡するか、面接官(施設長)が待つ上限をどこに置くか | 当日の人手は施設が把握しており、現場に戻る判断も施設で下すため |
| ⑤ 記録と月次の集計 | 12 | 本部 | 記録の様式、分母・分子の定義、月次の集計 | 定義が施設ごとに違うと、施設間・月ごとに比べられなくなるため |
施設が決めるのは①と④の2つ、本部が決めるのは②③⑤の3つです。
②の確定通知で本部が決めるのは、文面の型までです。面接官名・場所・所要時間は施設ごとに違うため、差し込み欄にして施設側が埋める形にします。行けなくなったときの連絡先を本部の窓口にするか施設の電話にするかも、ここで先に決めておきます。連絡先を施設の電話にすると、施設長が出られない時間帯に応募者が連絡できない場面が考えられるためです(論理です。効果を示す調査はありません)。
①の面接枠は、施設で枠を出せない場合に限り、一次面接を採用担当者または自動化に任せる型に切り替える方法があります。これは、打ち手3(応募から面接までの間を空けない仕組み)が挙げる、応募直後の一次面接にあたります。この場合、枠を出す役割そのものが施設から本部に移るため、①は本部が決める項目になります。切り替えるかどうかは施設ごとの状況を見て決め、相談先は本部です。

4. 公開されている無断キャンセル率の見方 — 2つの調査は並べて比べられない
公開数値には、方向が逆に見える2つの記述があります。
| 調査 | 実績年 | 全体 | 医療・福祉・介護の扱い |
|---|---|---|---|
| マイナビ 中途採用状況調査2022年版 | 2021年 | 9.0% | 5.2%。全体9.0%より低く、公表された7業種中、高い順に5位(報告書p.53) |
| マイナビ 中途採用状況調査2026年版 | 2025年 | 5.4% | 数値の記載なし。「サービス・レジャー」「医療・福祉・介護」が他業種に比べて高め、という傾向記述(報告書p.34) |
ただし、この2つを並べて「率が上がった」とは読めません。調査年度が違い(2021年実績と2025年実績)、算出法が異なり、どちらも、その年の他業種や全体との相対的な位置を述べているだけで、基準が同じではないからです。業種別の回答数は、2022年版・2026年版とも確認できていません。この2冊から、業種の傾向が変わったかどうかは判断できません。
公開数値は目安にとどめ、自法人の率は、十二の打ち手記事の定義(分母は面接確定数、分子は連絡なしで実施されなかった面接数)で毎月同じ基準で数えます。施設ごとの面接確定数が少ない月は、率が大きく振れます。施設別は件数で見て、率は法人全体で出す、という見方を勧めます(編集部の整理)。
5. 面接に来なかったことを本部に渡す — 手段・内容・期限を決める
本部の項目(②③⑤)と施設の項目(①④)は、最後に記録でつながります。④の当日対応で何があったかが本部に届かなければ、⑤の月次集計ができません。そこで、施設から本部へ渡すものを3点だけ決めます。1つは手段で、施設ごとに電話・メール・チャットがばらつかないよう、本部が共有シート1枚か法人のチャット1か所に指定します。2つ目は内容で、日付・施設名・結果の3区分を1行で足ります。3区分とは、実施、事前連絡ありの変更・取りやめ、連絡なしで実施されなかった、という十二の打ち手記事の分け方です。3つ目は期限で、施設長が現場に戻ったあと、当日中に1行入れる形を目安にします(編集部の目安)。
この節で決めるのは、起きたことを本部に渡す経路です。
6. 自法人の分担を点検する
次の表の問いに、5つとも「はい」と答えられるかを確かめます。
| 段取り | 点検の問い | 「いいえ」のときの最初の1手 |
|---|---|---|
| ① 面接枠の出し方 | 施設ごとに、枠の型と曜日・時間帯が決まっているか | 施設長に面接に出られる曜日・時間帯を聞き、施設ごとに1枚へまとめる |
| ② 確定通知 | 本部に文面が1つあり、施設長は差し込み欄を埋めるだけか | 本部が、十二の打ち手記事の打ち手4〜6を入れた文面を1つ作る |
| ③ 前日リマインド | 送る人と時刻・手段が決まり、施設長の作業が要らないか | 送る人を本部で1人決め、送った記録を残す |
| ④ 当日の連絡担当と上限 | 施設ごとに、連絡担当と待ち時間の上限が決まっているか | 施設ごとに決めて、本部に共有する |
| ⑤ 記録と月次の集計 | 様式が1つで、施設から当日中に本部へ渡る形か | 3区分の1行記録を共有シートで始める |
複数が「いいえ」のときは、⑤の記録から始めます。数えていない状態では、ほかの項目を決めても効果が分かりません(十二の打ち手記事と同じ考え方です)。
本部に採用担当者がいない法人では、「本部が決める」と書いた②③⑤を担う人を先に決めます。総務や人事など、法人内で1か所に集める役割です。担う人がいないまま「本部で決める」としても、結局は施設長に戻ってきます。
運用を始めて1か月たったら、施設別の件数と法人全体の率を見て、分担を見直します。どの項目が抜けているかが分かれば、12の打ち手のうち次に打つ手も見えてきます。
よくある質問
施設長が面接官のとき、本部がまず決めるべきことは何ですか?
確定通知と前日リマインドの文面・送り方(打ち手4〜8)、そして記録の様式(打ち手12)です。文面と様式は1つあれば足り、施設ごとに作るとばらつくためです。施設長の作業は、差し込み欄を埋めることと、結果を1行入れることに絞れます。この分け方は編集部の整理で、公的調査で裏づけたものではありません。
介護の採用で、面接に来ない応募者が出たとき、施設長は何を本部に伝えればよいですか?
手段・内容・期限の3点を、あらかじめ1つに決めておきます。手段は本部が指定する共有シート1枚か法人のチャット1か所、内容は日付・施設名・結果の3区分を1行、期限は施設長が現場に戻ったあとの当日中が目安です(編集部の整理)。来なかった応募者への連絡の手順そのものは、十二の打ち手記事の打ち手10・11を参照してください。
介護の面接無断キャンセル率は、他業種より高いのですか?
公開数値からは判断できません。マイナビ2022年版(2021年実績)では、医療・福祉・介護が5.2%で、全体9.0%より低く、公表された7業種中、高い順に5位でした。2026年版(2025年実績)は、他業種に比べて高めという傾向記述のみで数値はありません。調査年度・算出法が違うため、並べて比較できません。自法人の率は自社で数えてください。
本部に採用担当者がいない小さな法人でも、本部と施設の分担は必要ですか?
分担の考え方は同じです。「本部が決める」項目は、法人内で1か所に集める役割ですので、総務・人事など担う人を決めてください。施設が1つだけの法人では分担は要らず、十二の打ち手記事の12項目をそのまま施設長が回す形になります。
出典
- 株式会社ノーザンライツ「アルバイトの採用実態調査」2023年12月18日〜19日(IDEATECH「リサピー®」によるインターネット調査)。小売業・飲食店の店舗責任者・エリアマネージャー・本部採用担当者106名(内訳の人数は非公開)。「採用業務が主務ではなく十分な時間を確保できないため」44.2%は、採用プロセスの改善が必要な理由の複数回答。介護施設を対象にした調査ではない。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000045940.html
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度介護労働実態調査」(事業所調査・労働者調査)。実施期間は令和7年10月1日〜31日。概要ページでは、施設長の採用業務時間や本部と施設の採用分担を問う設問は確認できなかった(報告書本文の全文確認は未了)。 https://www.kaigo-center.or.jp/report/
- 株式会社マイナビ「中途採用状況調査2022年版(2021年実績)」2022年1月調査。従業員3名以上の企業で2021年に中途採用業務を担当した人事担当者1,400件、2022年1月21日〜24日。面接無断キャンセル率(全体9.0%・業種別)は面接設定数・内定者数がともに1人以上の1,091件で集計(報告書p.53)。業種別は、流通・小売・フードサービス20.3%/サービス・レジャー13.9%/運輸・交通・物流・倉庫13.2%/商社9.4%/医療・福祉・介護5.2%/IT・通信・インターネット4.5%/メーカー3.9%。 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20220407_25952/
- 株式会社マイナビ「中途採用状況調査2026年版(2025年実績)」2026年3月公表(2025年12月調査)。従業員3名以上の企業で中途採用業務を担当し採用費用の管理・運用に携わる人事担当者1,500名、2025年12月17日〜22日。面接無断キャンセル率(2025年5.4%)と、業種別の傾向記述(「サービス・レジャー」「医療・福祉・介護」が他業種に比べて高め。数値の記載なし)は報告書PDF p.34。2022年版までとは算出法が異なり、単純な時系列比較はできない。 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260327_109053/



